歯並びに関する悩みと基礎知識
乱杭歯の問題点・デメリット
八重歯など、ある意味でチャームポイントともなりうる乱杭歯。特に歯並びが悪いという意識はない方も多いのではないでしょうか。また、多少噛み合わせが悪い程度であれば、日常生活に支障は見られず、放置している方も多いはず。
しかし、乱杭歯を放置していると思わぬ危険が潜んでいる可能性もあります。ここでは、乱杭歯の問題点やデメリットを、医学的な観点から歯科医師がまとめました。
乱杭歯になる原因と放置することによるデメリット
乱杭歯になる原因
八重歯(やえば)、ガタガタ歯、叢生などさまざまな呼び方をされる乱杭歯(らんぐいば)。乱杭歯になる原因は、あごの骨が十分に発達しないことにあります。
あごの骨の発達が足りないと、歯が生えてくる歯槽骨(しそうこつ)の広さも足りなくなり、生えてくる歯が歯槽骨内に収まり切らず、歯並びが悪くなってしまうのです。
放置することによって考えられる問題点やデメリット
時にはチャームポイントとも言われることのある乱杭歯ですが、放置しておくと以下のような 問題点やデメリットが発生します。
- 食べ物の残りかすが引っ掛かりやすい
- 磨き残しにより虫歯や歯周病になりやすい
- 食事や会話にも悪影響がある
- 子どもはあごの骨の発達にも影響が出る場合がある
- 頭痛や肩こりなどの原因になる場合も
- 歯並びが悪いことによる精神的な影響
- 咬み合わせが悪いために歯周病の原因になりやすい
乱杭歯の問題点
では、実際に放置していることでどういった問題が生じる可能性があるのか、見てみましょう。
問題点その1:食べ物の残りかすが引っ掛かりやすい
乱杭歯で複雑な凹凸ができている部分や少しすき間ができている部分には、どうしても食べ物の残りかすが引っかかりやすくなる点が、1つ目の問題点です。食べ物の残りかすは口内に生息する細菌のエサとなり、虫歯になりやすい口内環境になる 可能性が大きくなります。
問題点その2:磨き残しにより虫歯や歯周病になりやすい
乱杭歯をそのまま残していると、どうしても歯ブラシが届きにくく、歯磨きをしても磨き残してしまう部分が出てきます。これが2つ目の問題点です。磨き残しの部分には、歯垢がたまり、やがて歯石になり、虫歯や歯周病の原因となり得ます。
問題点その3:食事や会話にも悪影響がある
乱杭歯があると噛み合わせが悪い場合が多くあります。噛み合わせが悪いと、食事の効率が悪くて必要以上に時間がかかったり、話す時に発音がうまくできなかったりといった弊害が出る可能性がある点が3つ目の問題点です。
問題点その4:子どもはあごの骨の発達にも影響が出る場合がある
成長期の子どもが乱杭歯になってしまうと、あごの骨の正常な発達を妨げる可能性があります。
問題点その5:頭痛や肩こりなどの遠因になる場合も
噛み合わせが悪いと、身体全体のバランスが悪くなり、そのひずみによって頭痛や肩こりが発生する場合もあります。この場合、噛み合わせの悪さが頭痛や肩こりを引き起こしているとは気づきにくく、原因不明のままこれらの症状に悩まされることも少なくありません。
問題点その6:歯並びが悪いことによる精神的な影響
歯並びが悪いと、見た目が気になってしまい精神的なストレスとなる場合があります。口元に劣等感を持つと、話す時に口元を隠して話すクセがついたり、何事にも積極的になれずにさまざまな局面で損をしたりしてしまう可能性も。また、単に口元だけの問題ではなく、身体全体への影響や精神的な面でのストレスなど、より大きな問題やデメリットに発展する場合もあります。
問題点その7:咬み合わせが悪いために歯周病の原因になりやすい
咬み合わせが悪いと、歯ぎしりのように一部の歯に対して不自然に大きな力がかかります。その結果歯周病を引き起こす場合があります。
放置された乱杭歯の対処方法
乱杭歯を放置しておくと、さまざまな問題があることを見てきました。放置してきた乱杭歯は、歯を抜かずに適切な位置へ動かせる歯科矯正が適切な治療法です。
あごが小さ過ぎて、歯科矯正をしてもすべての歯が収まり切らないと医師が判断した場合は、必要最低限の抜歯を伴う矯正になる場合もあります。歯科矯正の種類には、以下の方法があります。
- ワイヤーを使用した歯科矯正
- マウスピースを使用した歯科矯正
- セラミックを使用した歯科矯正
ワイヤーを使う歯科矯正は基本的にはどのような症例にも対応できます。マウスピースを使用した歯科矯正は審美面に優れ、セラミックを使用した歯科矯正は短期間で治療が終わるというメリットがありますが、どちらも乱杭歯の症状が進み過ぎた場合は適用できないこともある治療法です。
ワイヤーを使用した歯科矯正
ワイヤーを使用した歯科矯正は、昔から乱杭歯を治療する方法としてなじみのある治療法です。ワイヤーの種類には色々ありますが、歯の表側にワイヤーを設置して矯正をする方法と、歯の裏側(舌側)にワイヤーを設置して矯正する方法があります。
治療の流れとしては、一定間隔で矯正歯科に通院して、歯の動きを確認しながらワイヤーの調整を行い矯正の調整をするのが一般的です。最近では、歯科用の3DCT装置で立体的な画像撮影が可能になりました。 コンピューターのシミュレーションによって精密な矯正器具が作成でき、矯正が完了するまでの時間を短縮できる治療方法も確立されつつあります。
マウスピースを使用した歯科矯正
ワイヤーを使用した歯科矯正と同様に、マウスピースを使用した歯科矯正も広く行われている乱杭歯の治療方法です。ワイヤーを使った歯科矯正は、美容面でどうしても気になるという人がいます。特に、人前で会話をしなければならない営業職や接客業の人にとっては深刻な悩みです。この悩みに応じられる矯正方法として、透明なマウスピースを使った歯科矯正も行われるようになりました。
マウスピース矯正はワイヤーに比べ、取り外しが可能なため歯を清潔に保ちやすく食べたいものが食べられる、ワイヤーによる口内の傷つきの心配がないなどのメリットがあります。ただし、乱杭歯の程度によってはワイヤーでしか対応できない場合もありますので、歯科医と相談した上で選択可能かどうかを確認する必要がある対応方法です。
セラミックを使用した歯科矯正
セラミックを使用した歯科矯正は、歯の飛び出た部分を削りセラミックの歯をかぶせることで、正しい歯並びになるようにする歯科矯正方法です。歯並びの悪さがあまり大きくない場合には、治療期間が短く審美性の高い歯になることもメリットと言えるでしょう。
ただし、自分の健康な歯を削ることになり、時には神経を取る必要がある点と、歯並びが非常に悪い場合には適用できないのがデメリットの治療方法です。
乱杭歯は放置せず対策を
乱杭歯を放置することによる問題点と、乱杭歯の対策方法についてご紹介しました。乱杭歯を放置すると、虫歯や歯周病の原因になるだけでなく、頭痛や肩こり等の身体的な症状や、食事や会話への悪影響が出る可能性があります。
これらの症状や悪影響を防ぐ対処方法としては、歯科矯正による乱杭歯の解消が適切な選択肢です。顎の骨に対して全部の歯が収まり切らない場合は抜歯を伴う場合もあります。
かなり進行してしまった乱杭歯の治療は、ワイヤーを使用した歯科矯正が良いでしょう。進行度がそこまでひどくない場合は、審美性に優れるマウスピースを使った歯科矯正や、治療スピードの速いセラミックを使用した歯科矯正も選択できます。
乱杭歯は放置せず、できる限り対策して歯や心身の健康を守りましょう。
この記事を監修した医師
- 医師名
- 丸山 浩二(マルヤマ コウジ)
- 所属クリニック
- 丸山矯正歯科
- クリニック所在地
- 東京都港区浜松町2-11-16ユーワビル3階
- クリニック公式サイト
- http://www.maruyamaortho.com/index.html