歯ではなく顎を動かす!?床矯正とは
どのような治療法なの?
床矯正は顎の骨の発育が活発な子ども向けの治療法
床矯正(しょうきょうせい)とは小児矯正の一種。顎の骨の発育が活発な6歳~11歳くらいの子どもに適しているといわれる治療法です。顎の骨の幅を広げることによって歯が生えるスペースを確保して、抜歯などをせずに歯並びを整える目的でおこなわれます。
生えてくる永久歯に対してスペースが狭いと、叢生や出っ歯になるリスクが高まります。歯の生え変わりの時期に歯の内側から力をかけることによって、正しい位置に歯が生えてくるように誘導するような役割も持っています。
ワイヤー矯正は取り外しができませんし、マウスピース矯正でも20~22時間もの長い時間矯正装置を付ける必要がありますが、床矯正の場合は就寝時間を中心に14時間程度の装着で済みます。しかも取り外して普段どおりに食事もできますし、歯磨きもできます。
こんな人におすすめ
- でこぼこの歯並びにならないよう予防的な治療をしておきたい
- ワイヤー矯正など負担のかかる治療法は避けたい
- 強い痛みを感じにくい治療法で矯正したい
床矯正の
メリット・デメリット
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メリット
- 装置の取り外しが可能(固定タイプを除く)なので歯みがきなどのケアがしやすい
- 取り外せば普段どおりに食事ができる
- ワイヤーなどの違和感が少なく痛みも感じにくい
- ワイヤー矯正やマウスピース矯正よりも装着時間が短い
- ワイヤー矯正やマウスピース矯正よりも費用が安い
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デメリット
- 親御さんが矯正装置のネジを巻くなど管理と手間がかかる
- 装置を外した際にうっかり装置をなくしてしまうことがある
- ネジを回し忘れると矯正効果を得られない
- 子どもが自己管理するのは難しく装置が破損するなどのリスクがある
- 単独では効果が出ずほかの矯正治療と併用しなければならない可能性がある
大人は床矯正できない?
一般的には子どもが受けることの多い治療法ですが、大人でも床矯正(しょうきょうせい)ができる場合もあります。ただし、顎の状態や歯並びの状態が限定されます。床矯正によって顎の骨を広げることによって矯正のためのスペースができれば、歯を抜くことなく歯並びをきれいに整えることができます。
ただし子どもに比べて顎の成長が止まってしまっている大人の場合は、顎を広げることができるかどうかは個人差や年齢による違いがあります。ほんの少しスペースができたとしても限界があるため、床矯正をしたあとにワイヤー矯正やマウスピース矯正で歯並びを整えるといった治療が必要となる場合が多いようです。
ほかの矯正治療より痛みや違和感といったストレスが少ないため、大人になってからでも床矯正で治療できないか、矯正歯科などの専門医に相談してみるようにしてください。
床矯正にはどのような種類がある?
床矯正[しょうきょうせい]は、取り外しのできる矯正装置の1つです。 床矯正は、口の裏側、床下粘膜部につけるプラスチック製の床部分(レジン床)と、表側の歯にかける金属線で作られた入れ歯のような構成の装置です。 レジン床に、バネやネジを埋め込むことで、歯を移動します。 乳歯、あるいは乳歯が永久歯に生え変わる混合歯列期の不正咬合の治療によく用いられ、永久歯列では補助的矯正装置や後戻りを防ぐ装置として用いられています。床矯正の装置は口の裏側の粘膜のところに密着させるプラスチック製の床部分(レジン床)と、表側の歯にフックのようにひっかけるワイヤーでできています。わかりやすく描写するとしたら、歯の部分がない入れ歯のような構造をしています。
レジン床にバネやネジなどを埋め込んで負荷をかけながら、歯を動かしていきます。
先ほど大人の場合は効果が出にくい、床矯正できる症状が限定されると説明しましたが、後戻りを防ぐ装置として活用されたり、補助的矯正装置として採用されることもあります。ここで床矯正の装置にはどのようなものがあるか、紹介しておきます。
アクティブプレート(可撤式拡大床)
でこぼこした歯並びの叢生などで、1~2本内側に入ってしまっている歯を押し出し、前歯の歯並びを整えるために顎を広げてスペースを作るための床矯正装置です。プラスチックの中に、歯を前に押し出す力を調整するためのネジが埋め込まれています。子どもの矯正によく使用されるタイプです。
咬合挙上板(バイトプレート)
混合歯列期の過蓋咬合[かがいこうごう]の治療に使われる床矯正装置です。咬合(上下の噛み合わせ)の高さを上げて歯列を整えます。ワイヤー矯正などの治療後に保定装置(リテーナー)としても用いられることもあります。
咬合斜面板(ジャンピングプレート)
咬み合わせが深い状態で、下顎の位置が後ろに下がってしまっている場合に使用する床矯正装置です。下顎の位置を前に誘導するために使います。乳歯と永久歯が生えている混合歯列期に用いることが多いようです。
クワドヘリックス・バイヘリックス(固定式)
固定式の床矯正装置で、歯列を側方に拡大させて上の歯の生える場所を作ります。顎が小さく歯が生えるスペースがなく、歯並びがガタガタになっているお子さんの治療に使います。ほかの床矯正のように自分で取り外すことはできませんが、親御さんがネジを回して調整する必要はありません。
クワドヘリックスは上顎の床装置で、バイヘリックスは下顎の床装置です。顎の骨格や歯並びなどの症状によって使い分けます。
参照元
矯正歯科ネット「床矯正装置とは」
https://www.kyousei-shika.net/knowledge/article/261/
みどり区 左京山歯科・矯正歯科クリニック「歯の豆知識ブログ」
https://www.sakyoyama-dc.com/blog/dentition-orthodontics/qh-bh/
床矯正による治療の流れ
レントゲン撮影などを通じ、床矯正が必要な状態であるかどうか、また、床矯正によって効果を得られるかどうかを確認します。
床矯正の適応と判断された場合には、矯正装置の製作に着手。歯型を取り、歯科技工所にてオーダーメイドで床矯正装置を製作します。
完成した装置を口の中へ装着。その後、歯科医師の指示に応じて定期的に通院し、メンテナンスやケアを受けます。
アゴの骨を十分に矯正できた段階で、その広さをキープさせる装置を固定。そのまま永久歯が生えそろうまで待ちます。
永久歯が生えそろった段階で治療が終了となります。
床矯正の費用相場
床矯正の費用相場は200,000~400,000円です。これに加えて、定期的な処置料として、通院のたびに3,000~5,000円ほどがかかります。
中には、床矯正を部分矯正としての扱いとし、治療費を50,000~150,000円程度としている歯科医院もあるようです。治療費の詳細については、治療予定のクリニックで直接確認してください。
なお床矯正には保険が効きません。全額、患者の自己負担であることを了承しておきましょう。
床矯正の治療期間
顎の状態に応じ、治療に要する期間には大きな個人差があります。目安として、軽症の患者の場合には約1年半、重症の患者の場合には約3~5年ほどと考えておきましょう。
床矯正は、永久歯が生えそろう前に終わらせておくことが理想です。小学3年生ごろには床矯正を終えられるよう、逆算して治療スタート時期を検討するようにしましょう。治療期間については永久歯が生えそろうタイミングにもよりますので、6ヶ月から2年くらいの幅があります。
床矯正の注意点
どのような治療でもそうですが、すべての子どもが床矯正で治療できるわけではないということは理解しておく必要があります。また先ほどから「顎を広げる」と説明してきましたが、正確に言えば顎の骨格自体が広がるわけではありません。歯槽骨と歯が一緒に倒れ込んでいる場合に、床矯正装置で倒れ込んでいる歯を正しい位置に戻してあげるのが、床矯正の役割です。
歯並びが悪い原因が歯が生えるスペースのなさによるものではなく、歯そのものにある場合は、床矯正による治療よりも抜歯したり歯を削ったりといった治療のほうが適しています。
マウスピース型矯正のように治療完了後の歯並びをデジタル環境でシミュレーションできるわけではありませんので、具体的な症例写真や治療事例を見せていただくなどして、親御さんが納得したうえで治療をしていくようにしてください。
参照元
エムアンドアソシエイツ矯正歯科公式サイト歯列矯正の基礎知識コラム「大人の床矯正は可能?矯正で失敗しないために知っておくべきポイント」
https://maaortho.com/column/adult_orthodontic_plate.html
神奈川県歯科医師会オーラルヘルスオンライン「お子さんの歯並びを治すため 床矯正という治療を勧められたら」