治療の前に必ず確認!矯正治療の費用について
矯正治療で一番疑問の多いのが、治療費についてです。矯正治療の費用は複雑で、お口の中の状態やクリニックの診療方針などによって料金設定が異なります。支払方法も院内分割やデンタルローン、クレジットカードの利用など様々です。確認しないまま治療を受けるとトラブルに発展しますので、治療前に見積もりや支払方法をきちんと確認しておきましょう。
費用の内訳はどうなっているの?
大人の矯正費用の内訳は大まかに7項目あります(下記の表を参照)。矯正治療は自由診療ですので、費用の設定はクリニックごとに異なり、矯正装置と調整料を含めた固定制や、装置を作り変えるごとに費用が発生する都度払い制など様々です。個々の料金だけを見て判断せずに、治療にかかる総額や医院の方針をきちんと確認しましょう。
▼矯正治療にかかる費用の目安
治療前にかかる費用
初診・相談料 | 歯のお悩みについて聞き、治療方法や装置について説明します。 | 0~5,000円程度 |
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精密検査料 | レントゲン撮影や、お口の中やお顔の撮影、歯型の採取をします。 | 25,000~60,000円程度 |
診断料 | 検査結果に基づき、治療計画(費用・期間、治療方針)を説明します。 | 10,000~40,000円程度 |
治療中にかかる費用
装置・基本料金 | 選択した矯正装置により異なります。 | ■表側装置 60万~100万円程度 ■裏側装置 100万~150万円程度 |
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処置(調整)料 | 矯正装置の調整、経過観察を 行います。 |
1,000~10,000円程度/1回 ※内容により異なります。 ※装置・基本料金に含まれる場合もあります。 |
治療後にかかる費用
保定装置料 | 治療装置を外した後に、歯並びの後戻りを防ぐため保定装置(リテーナー)を作成します。 | 10,000~60,000円程度 ※装置・基本料金に含まれる場合もあります。 |
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定期検診・メインテナンス料 | 矯正装置の調整、経過観察など。後戻りがないか、年に数回確認します。 | 2,000~8,000円程度 ※保定装置料に含まれる場合もあります。 |
治療費のここに注意!
治療費の計算や支払方法などはクリニックごとに異なります。まず、確認しておきたいことは、治療が終わるまでの費用が総額でいくらになるのか。検査料はかかるのか?基本料金には何が含まれるのか?契約以外にかかる費用はあるのか?など。分割で支払う場合は、分割回数や金利手数料などもチェックしましょう。また、治療方針が途中で変わることがあります。その場合の費用について、事前に確認しましょう。
治療法の種類と費用
ワイヤー矯正治療の費用とメリット・デメリット
歯の面側につける矯正装置を使い、ワイヤーの力でゆっくりと歯を動かしながら歯の重なりや歯並びの乱れを解消していきます。歯を移動させるスペースが不足している場合は抜歯が必要です。
- 費用:70-90万円程度
- 期間:2年程度
- メリット
- 歯1本1本に矯正器具を取り付けることで丁寧に矯正できる。
- 多くのクリニックで普及している治療法のため、基本的にどこに行っても受けられる
- デメリット
- 歯の表側につける矯正器具が目立つ・矯正器具をつけることによる虫歯のリスク増
部分矯正の費用とメリット・デメリット
歯並びによっては、気になる部分だけを部分矯正で整えることができます。移動させる歯と周辺の歯に装置を装着して、歯を真ん中に移動させていきます。全体矯正に比べると治療期間が短く、治療費用も抑えることができます。ただし、比較的軽い症状の場合のみ有効です。
- 費用:40万円程度
- 期間:2年程度
- メリット
- 奥歯に矯正器具をつけないために違和感が少ない
- デメリット
- そもそも部分矯正では治せない場合がある
- 上下全体の咬み合わせに問題が起きる可能性
マウスピースの費用とメリット・デメリット
マウスピース矯正は、定期的に歯型に合せたマウスピースを交換しながら隙間を埋めていく方法です。マウスピースは透明で目立ちませんので、人目を気にする方におすすめです。
- 費用:60-80万円程度
- 期間:1-2年程度
- メリット
- 矯正がばれない
- 食事・歯磨きの時に器具を外すことができる
- 痛み・違和感が少ない
- デメリット
- 歯を動かす力が弱いので、歯並びの状態が比較的軽いものしか対応できない
歯の裏側から装置をつける舌側矯正の費用とメリット・デメリット
舌側矯正(ぜっそくきょうせい)とは、歯の裏側に装置を取り付けて歯を動かす矯正方法です。治療効果は表側の矯正装置とほとんど変わりません。しかし、装置が全く表に見えませんので、矯正治療中でも安心して口を大きくあけて笑えます。ただし表側装置に比べて少々治療期間が延びる場合があります。
- 費用:100-150万円程度
- 期間:3年程度
- メリット
- 矯正が見えない
- 虫歯のリスクが低い
- デメリット
- 矯正期間が表側矯正に比べて約1.5倍かかる
- 費用が高くなる
- 舌の動きを制限し、発音に影響する
「総額制」と「処置別支払い制」の違いは?
矯正治療の支払い体系には、「総額制」と「処置別支払い制」の2種類があります。「総額制」は通院回数に関係なく費用が固定されていて、通院ごとに費用が派生するのが「処置別支払い制」です。それぞれにメリット・デメリットがあり、場合によっては後から支払額の多さに驚くこともありますので、きちんと確認しましょう。
費用の支払い方法の比較
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総額制(定額制、トータルフィー制)
契約段階で矯正治療が終わるまでにかかる総費用を提示する方法です。費用には矯正装置にかかる料金や通院時の処置料、治療後の保定装置料などすべてが含まれています。シンプルで支払計画が立てやすい料金体系です。
- ここに注意!
- 費用が固定されていますので、治療期間が予定より長引いても追加料金は発生しません。その代わり早期に治療を終えた場合も減額されませんので、人によっては割高になってしまう場合もあります。
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処置料別払い制
矯正装置と基本料金、処置料など、治療項目ごとに料金を設定している方法です。一般的には契約時に「矯正装置と基本料金」を提示します。通院期間中に生じる矯正装置を調整する処置料等は、その都度支払います。
- ここに注意!
- 治療期間が短く、通院回数が少ない場合は、通院ごとに支払う処置料の支払い額が少なくなります。その逆に、治療期間が長引く場合は処置料の支払い額も増えますので、総額で考えると治療費がかさみます。
分割払いやカードでの支払いはできるの?
クレジットーカード支払い
普段使っているクレジットカードで支払う方法です。契約カードの規定に基づいて支払回数を決めてその場で決済します。クリニックごとに対応できるクレジットカードが異なりますので、事前にどのカードが利用できるかを確認しておくことが必要です。
デンタルローン支払い
クリニックが提携している信販会社にローンを申し込んで支払う方法です。手続きはすべてクリニックを通して行いますので迅速で、煩わしさがありません。クリニックや信販会社によって金利手数料が変わってきますので確認しましょう。
院内分割支払い
信販会社を通さない方法で、クリニックと分割契約を直接交わします。支払回数や支払い期限、分割手数料、支払方法(銀行振込・受付払い)などはクリニックごとに規定があります。患者さんの都合に合わせてくれますので、相談しながら決めるといいでしょう。
税金の一部が返金されるって本当?-医療費控除とは-
医療費控除とは?
矯正治療費は医療費控除の対象になる場合があります。医療費控除とは、年間に支払った医療費が10万円を超える時、税金の一部が控除される制度です。矯正治療にかかった治療費用は条件を満たしていれば対象となり、確定申告をすることで納付した所得税の一部が戻ってきます。一定の条件がありますので説明していきましょう。
医療費控除の申告の条件
医療費控除の対象になる人
医療費控除の対象になる人は、納税している人自身と、生計を共にする配偶者や親族、つまり家族にかかった医療費も対象になります。
医療費控除の対象になる期間と申告する時期
医療費控除の対象になる期間は、その年の1月1日から12月31日までです。この医療費がいくらかかったかを申告する確定申告は、次の年の2月16日から3月15日の期間です。
そのため、年末までにどのくらい医療費がかかったかどうかを書き留めておいて、次の年の2月頃には書類をまとめられるようにしておきます。
ただ、医療費控除だけが必要な場合は、還付申告で1年中申請が可能ですし、5年までさかのぼって申告できるので、過去に申告し忘れていたものがあれば、すぐにでも準備しましょう。
医療費控除の対象になるもの
次に、何にかかった費用を医療費とするかについて簡単にご紹介します。
*医師又は歯科医師による診療や治療にかかった費用。
*治療又は療養に必要な医薬品の購入にかかった費用。
*通院時の公共交通機関による交通費(自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場代は含まない)。
など、ほかにも通院が困難な場合の介助にかかる費用など多岐にわたります。
歯科矯正の場合は、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的など、歯列矯正が必要と認められる場合は、医療費控除の対象になりますが、美容目的の場合は対象にならないので注意してください。
控除される金額の計算方法
次に、控除される金額の計算方法をご説明します。対象になる医療費の合計は1年で10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%の金額)以上で、これは診療時ではなく、支払った時期が1年以内かどうかで判断します。
医療費控除の金額は、生命保険などの入院費給付金や健康保険などで支給される一時金などを引いた額になり、最高で200万円になります。
計算式としては、「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などの支給額)から10万円を引いた金額」になります。
また、医療費控除はこの金額がそのまま還付されるわけではなく、この金額に税率をかけたものが還付されることになります。
控除されるのは所得税と住民税ですが、税率は人によって異なりますので、一概にいくらとは言えません。
たとえば、所得金額が300万円の場合、所得税率は10%になります。
もし、医療控除される金額が20万円の場合、20万円×10%で2万円が還付されることになります。
医療控除の手続きの仕方
医療控除は、基本的に確定申告時に行われますが、会社員など勤め先によって年末調整をしてもらえる場合は、確定申告をする必要がありません。
そのため、確定申告をしない人が医療控除の申告をする場合には、「還付申告」をすることもできます。還付申告は確定申告のように時期が決まっていないので、1年中いつでも行うことができます。
還付申告は、最寄りの税務署の窓口で行えますが、ネット環境があれば国税庁のホームページで申請書を作成し、郵送で提出することも可能です。
医療費控除の申告に必要な書類は、以下の通り。
- ・確定申告書(税務署の窓口か国税庁のホームページで入手できます)
- ・源泉徴収票(企業に勤めている場合)
- ・かかった医療費を証明できるもの(領収証や明細など)
確定申告書は、住所や氏名などの情報と所得金額などを記載すればいいので、それほど難しくはありません。源泉徴収票があれば、ホームページや職員の指示に従って進めることができます。
重要なのは、医療費にかかった金額を証明するものです。治療にかかったものなら領収証を用意してもらえますが、交通費はそういったものが発行されにくいので、実際にかかった費用や日時などを細かくメモしておく必要があります。
電車やバスにかかった交通費などは、領収証がなくても、通院した日や病院の場所などから算出できるので、家計簿などの提出でも可能です。
ただ、毎回細かく記録しておいて、最終的にいくらかかったかスムーズに計算できるように準備しておきましょう。 また、領収証もなくさないようにきちんと保管しておくことが重要です。
医療費控除はかかった費用の一部のサポートですし、還付されるまで時間もかかるので、実際に治療を行う時にはやはり自分で費用を用意しないとなりません。それでも、高額な治療費の負担を少しでも軽くできるよう、こういった制度も賢く利用していきましょう。